glaucoma 緑内障

緑内障とは?

緑内障

 

ものを見るときに我々は、『網膜』という、カメラのフィルムのような役目をする組織に外からの映像を映すことで見ています。網膜には脳から伸びている、視神経という神経線維の束(たば)がつながっていて、網膜に映った映像を脳に伝達する役目を果たしています。緑内障はこの視神経の神経線維の数が減ってしまうことにより、網膜に映った映像を脳に伝達できなくなり、見えにくくなる病気です。進行すると失明することもあり、日本人の失明原因の第1位の病気です。

 

緑内障の症状

ゆっくり進行するタイプの緑内障は、初期のうちは視野に部分的に見えないところが出現しますが、自覚症状はありません。この時期の緑内障は、健康診断がきっかけで発見されたり、他の病気で眼科を受診した際に緑内障の検査を行って発見されることがあります。
緑内障が進行すると、症状が出現しますが、典型的な症状はなく、眼が疲れるとか、老眼が進行した感じがするとか、様々な症状が実は緑内障の症状だったということがよくあります。視力が下がるほどの症状が出現している頃には緑内障はかなり進行していることが多いです。気になる目の症状があるときは、早めの受診をおすすめします。

  • 目が疲れやすい
  • 視界のかすみ・ぼやけ
  • 視野の一部(中心や周辺)が見えにくい
  • 視力の低下
  • 夜間、街灯などの光かかって見える(光輪視)

 

急性緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)

緑内障の中には、急に発作的に眼圧が上昇し、眼の鈍痛、頭痛、充血、吐き気等、強い症状が出るタイプのものがあります。この緑内障は目の中の隅角という眼の中を循環する房水の出口が狭い人に起こりやすく、同じ緑内障という名前ですが、ゆっくり進行する緑内障とは発症する機序が異なります。頻度は低く、比較的まれですが、症状が強いので、場合によっては救急車を呼ぶほどのことになります。治療は点滴により眼圧を下げたうえで、レーザー手術や虹彩の根元を切除する手術になります。緑内障発作の予防としては、白内障手術が有効です。これは白内障手術により、厚みのある水晶体が薄い眼内レンズに変わることで構造上、発作が起きなくなるためです。発作を引き起こすものとしては、眼科で眼底検査をする際の散瞳剤点眼や胃カメラの前投薬などがあります。発作を起こしやすい眼は遠視の人に多いので、心配な人は一度眼科を受診してください。

緑内障の診断・治療

緑内障の検査では、視野内に見えない部分がないか(視野検査)、目の硬さは正常か(眼圧検査)、角膜と水晶体の間を循環する房水が排出される部位に異常はないか(隅角鏡検査)、神経線維が欠損や広がりがないか(光干渉断層計)を調べます。緑内障と診断した場合は、眼圧をコントロールして視野の進行を遅らせる治療を行います。緑内障の進行の仕組みには未解明な部分も多いですが、眼圧を下げることで緑内障の進行を抑制できることが分かっています。主な治療法としては、点眼治療、レーザー治療、手術の3つがあります。

 

用語解説

原発開放隅角緑内障(POAG)

「原発」は続発に対して用いられ、特に他の疾患などの原因が無いという意味です。隅角が広いタイプの緑内障のこと。

正常眼圧緑内障

原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常範囲(10から20mmHg)である緑内障のこと。最近の研究で日本人はこのタイプの緑内障が多いことがわかっています。

小児緑内障

小児期に発症する緑内障の総称。以前は先天緑内障、発達緑内障と呼ばれていたものはこれに含まれます。

続発緑内障

何らかの原因疾患や薬物使用により、眼圧が高値になり発症する緑内障。ぶどう膜炎、ステロイド剤の飲み薬や塗り薬、点鼻薬、眼の外傷によるものなどがあります。

点眼治療

点眼治療では点眼薬を使用して房水の生成と排出を調節し、眼圧を下げます。緑内障の治療に用いる点眼薬には、その作用秩序から複数の種類があり、それらを組み合わせて治療を進めていきます。点眼の効果がみられない、あるいは不十分な場合は、点眼薬を追加したり、組み合わせを変えたりします。

レーザー治療

点眼治療による効果が不十分な場合、特殊なレーザーを使用して房水の排出を調整し、眼圧の上昇を抑えます。比較的低侵襲な治療が可能で、痛みもほとんどありません。日帰りでの治療が可能です。

手術

手術による治療も眼圧を下げることが目的です。残念ながら、白内障手術のように見えなくなった視野を見えるようにするものではありません。

緑内障手術について

緑内障手術は大きく2つに分けて「流出路再建術」と「濾過手術」に分けることができます。流出路再建術は房水の生理的な流れはそのままにして、手術により房水を流れやすくすることで、眼圧を下げます。一方、濾過手術は房水を眼球の外に漏らすことで眼の中の房水を減らすことにより眼圧を下げます。
流出路再建術は重篤な合併症は比較的少なく、日帰り手術で安全に行えますが、眼圧を下げる効果には限界があります。一方、濾過手術は、眼圧を下げる効果は高い手術ですが、術後眼圧が下がりすぎるケースや手術部位に感染がおこるといった合併症のリスクがあります。平本眼科クリニックでは、2種類の低侵襲な流出路手術に対応しております。濾過手術が必要になるようなケースは緑内障専門施設へ紹介しています。当院では目への負担が少ない緑内障手術を行っております。手術時間も短く済みますので、症例によっては日帰りで手術を受けていただけます。日々忙しい毎日を送られている方も、この機会に緑内障の治療をご検討ください。

 

当院の緑内障診療について

緑内障は治療によって視機能が改善することは無く、点眼も地道に続けていかないと、失明することも・・・と思わず暗い気持ちになってしまいそうな病気ですね。
当院では緑内障の治療を、『この目薬をさし続けないと、いつか失明します。3種類、4種類でも我慢してさしなさい。』というお話にするのではなく、『今のあなたの眼圧は目標の値をクリアしていますね。視野は目薬をしていてもゆっくり進行しますが、今の進行のペースであれば見えなくなるのは120歳を超える頃です。大丈夫ですね。』というお話に持って行くのを目指して治療方針を立てます。
目薬は3種類、4種類をさすと時間もかかるし、忘れるし・・とても大変な作業なので、当院では目薬が3種類以上になる場合は可能な限り、手術治療やレーザー治療を検討してその負担を減らすようにしています。
緑内障手術と聞くと怖いと感じる方もおられるかもしれませんが、最近は低侵襲緑内障手術(MIGS)という安全に行える手術方法もありますので、安心して受けて頂くことができます。
緑内障にかかっても積極的に治療を受けて、明るい気持ちで日々の暮らしを送って頂きたい。これが我々の目指している緑内障診療です。