手術について
日帰り白内障手術
白内障手術について
白内障は眼のレンズにあたる水晶体が濁る病気で、手術では濁った水晶体を吸引することで摘出し、人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入するという手術を行います。
顕微鏡で行う高度な技術を要する手術ですが、手術器械の進歩により安全に手術が可能で、合併症は少ないです。術後の通院が可能な方であれば日帰り手術が可能で、手術時間も短時間で痛みも少ない手術です。
当院での手術を受ける方の流れをお話します。
手術の流れ
手術を受けることになったら、まず手術に必要な検査をします。
- ①採血(全身状態の確認、感染症の有無)
- ②角膜内皮細胞(黒目の膜の細胞の数をはかる)
- ③角膜曲率半径(黒目のカーブの具合をみる)
- ④眼軸長(眼の奥行きの長さ)
採血は手術前の全身状態を調べるためのものです。
全身状態が悪い状態で手術を受けると傷口が治りにくかったり術後感染への抵抗力が弱かったりするので急がない場合は手術を延期することがあります。
②の角膜内皮細胞は角膜の後面にあり、角膜を透明に保つのに重要です。細胞数が減少している場合は内皮細胞を保護する工夫をして手術をします。
③と④は眼の中に挿入する眼内レンズの度数を計算するのに必要です。以前は超音波を用いて測定していましたが、最近はより正確に測定ができる光学式の測定機器で測定しています。
手術の説明
血液検査結果が出たころに再来院して頂き、手術の説明をします。手術の具体的な方法、合併症等についてもお話します。大事な説明ですので、ご家族の方等、どなたか一緒に聞いておいてもらう方が良いでしょう。手術の日程についてもこの時に決定します。
手術前
3日前から抗生剤の目薬をして手術に備えます。手術の前日にはクリニックにお越し頂き、最終的な体調などの確認を行います。この時に左右間違いを防ぐため、手術を受ける側の手首にバンドを巻いておきます。
手術当日
帰りは片目に眼帯をして帰宅することになるので、出来れば付き添いの方と一緒に来院してください。手術の1時間前に来院していただき手術に向けての目薬をします。準備が出来たら少し休んでいただき、気持ちを落ち着けてから手術室に入室します。手術は15分程度です。
痛みはありませんので安心して手術を受けてください。手術が終わると眼帯をして待合室に戻ります。待合室で30分ほど休憩して、問題がないようであれば帰宅してもらいます。
手術翌日
翌日の朝に診察をします。感染症や眼圧上昇などがないか診察します。診察が終わったら眼帯は不要ですが、眼をぶつけたりしないように保護用の眼鏡を着用するように勧めています。
当院での手術について
当院の手術室は特殊なフィルターを用いた専用のエアコンで手術室内の空気をきれいにした上で、手術室の外の空気が室内に入り込まない仕組み(陽圧換気)も備えており、より清潔な環境で手術をおこなっています。
また、万が一手術中に停電が起きても、一定時間は電源を確保できる、無停電装置を備えており、安全には万全を期しております。
最近は器械の進歩もあり、より安全に手術を受けることが出来るようになってきています。白内障手術を御希望の方は是非一度ご相談ください。
緑内障手術
緑内障手術について
手術による治療も眼圧を下げることが目的です。残念ながら、白内障手術のように見えなくなった視野を見えるようにするものではありません。
緑内障手術は大きく2つに分けて『流出路再建術』と『濾過手術』に分けることができます。流出路再建術は房水の生理的な流れはそのままにして、手術により房水を流れやすくすることで、房水の流出を増やし、眼圧を下げます。一方、濾過手術は房水を眼球の外に漏らすことで眼の中の房水を減らすことにより眼圧を下げます。
流出路再建術は重篤な合併症は比較的少なく、安全に行えますが、眼圧を下げる効果には限界があります。一方、濾過手術は、眼圧を下げる効果は高い手術ですが、術後低眼圧や濾過胞感染といった合併症のリスクがあります。平本眼科クリニックでは、2種類の流出路手術を行っていますが、濾過手術が必要になるようなケースは緑内障専門施設へ紹介しています。
当院での手術について
a)トラベクロトミー(線維柱帯切開術)
黒目と白目の境界の裏側あたりに存在する、房水の流出路である、線維柱帯という組織の網目状の組織を眼内から切開し、房水の流れを良くすることで眼圧を下げます。最近では眼に対する負担がより少ない、極低侵襲緑内障手術(minimum invasive glaucoma surgery : MIGS )で行うことが多くなっています。
b)水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術
緑内障手術の新しい治療法として、極低侵襲緑内障手術(MIGS)が注目されており、当院でも『iStent inject® W』という器具を用いた手術を行っております。
iStent inject® Wは2018年に米国のFDAで認可され、これまで多くの患者さんに使用されています。国内では2019年に認可されています。
iStent inject® Wはチタン製の非常に小さなステントであり、体の中に埋め込む医療器具の中では世界で一番小さい器具であるため、手術時の切開創が小さく縫合もほとんど行われません。そのため、手術時間も短く、手術による体(眼)への負担が少ない手術となっております。
シュレム管へ直接挿入することにより、房水の排出を促し眼圧を下げる事が期待できます。
iStent inject® Wを使用する場合、必ず白内障手術を同時に受ける必要があるため、白内障手術を受ける際の緑内障点眼薬の減薬をご希望される方が適応となります。

指先に乗っているのが眼の中に留置するデバイスです。横の写真のような形状で房水が通過しやすくなっており、専用の器械で房水の出口である線維柱帯に留置します。
iStent inject® Wの説明動画
下記動画で手術内容をご確認いただけます。